国民連合とは月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場 集会案内 出版物案内トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年3月号

有害無益な吉野川可動堰は中止を

吉野川シンポジウム実行委員会代表世話人 姫野 雅義


 有害無益な可動堰計画

 四国で一番大きな川である吉野川の河口近くに江戸時代に造られた第10堰があります。第10堰は川の流れに沿って斜めに作られているため、洪水を受け流し壊れにくい上、石積みの透過構造なので、不必要に水が滞らない。維持管理面でも自然環境面でも、すぐれた点が多い堰です。
 建設省の計画によると、この第10堰を取り壊し、1・5キロ下流に可動堰(特定多目的ダム)を建設する。川の中に柱を建て、普段は鉄の扉を下ろして大量の水を貯め、洪水時には鉄の扉を巻き上げる、という長良川河口堰と同様の堰で、可動堰の目的は、利水と治水の二つです。
 この計画を知ったのが1993年頃です。本当に可動堰が必要なのか疑問をもちました。吉野川シンポジウム実行委員会をつくり、建設省に根拠となるデータを求めましたが、なかなか情報を公開しませんでした。また何度か吉野川シンポジウムを開き、問題点を追及してきました。
 そういう中で、建設省は突如として97年8月に建設目的の一つである利水を撤回しました。利水目的に根拠がなかったことを建設省も認めざるを得なかったんだと思います。したがって、現在の建設目的は150年に1回の洪水に備えるという治水だけです。
 しかし、治水目的も根拠がありません。第一に可動堰にする必要性がありません。第10堰ができて約250年、第10堰が原因で水害が起こったことはありません。建設省は、第10堰を撤去しないと洪水時に水位が上がって危険だと説明していましたが、根拠にしていた数字が架空であることが発覚し訂正しました。訂正した数値も過去の洪水痕跡で検証すると1メートルも違うことが判明しました。結局、洪水時に4〜5キロの区間の水位を数十センチ程度下げるというわずかな治水効果しかありません。
 第二は、膨大な税金の無駄づかい。1040億円(県の負担は160億円=県民1人2万円)の建設費と、毎年15億円の管理費がかかります。わずかな治水効果のために県民は重い負担を強いられることになります。また耐久年数が60〜70年で、改築が必要となり、後の世代にも負担をかけることになります。
 第三は、可動堰の危険性です。複雑で大規模な施設のため操作ミス、誤作動、事故の危険性がつきまとう。ハイテク設備は老朽化が早く故障の危険があり、大地震にも弱い。第10堰を撤去すれば川底が低下し、可動堰が大量貯水するため堤防が危険になります。
 第四は、環境破壊です。川原や干潟などの自然環境が消滅し、巨大な人口貯水池ができるため、水質が悪化しヘドロが堆積。また淡水と海水が混ざり合う汽水域が消滅し、河口干潟の破壊につながる。その結果、漁業破壊、地下水位上昇による農業破壊のおそれがあります。
 したがって現在の第10堰を撤去する必要はなく、治水対策としては第10堰を補修し、周辺の堤防を補強するほうが可動堰より効果的ですし、費用も10分の1で済みます。また、第10堰を保存し補修することが水質保全、景観、漁業や農業など自然環境から判断しても断然有利です。可動堰建設は、必要性のない事業、工事のための工事の典型的なケースであり、中止すべきです。

 住民無視の姿勢

 時がたつにつれて、有害無益な可動堰の実態が知られてきましたが、行政の住民無視の姿勢は続きました。
 95年に可動堰の建設事業の審議会が設置されました。メンバーの大部分が建設推進派の委員で、14回の審議会のほとんどは建設省の説明という状況。公聴会での住民の意見は聞き置くのみで、審議会は昨年7月に可動堰建設にゴーサインを出しました。97年3月に知事が可動堰推進を表明、県議会や徳島市をはじめ2市7町の議会で推進決議がされましたが、どれもまともな議論はありませんでした。建設省は、自治体の首長や議会の支持を「民意」として利用し、建設を推進してきました。
 しかし、民意はまったく逆です。可動堰問題が表面化したこの6年間のあらゆる世論調査はすべて可動堰建設反対が多数です。最近になるほど反対が多く、現地に近いほど反対が多い。左岸の藍住町では66%が反対、右岸の徳島市佐野塚地区では全戸が反対です。また昨年7月の朝日新聞の世論調査では、70%が住民投票をすべきだと答えています。さらに昨年7月の参議院選挙では推進派の現職が大差で落選、阿波町議会では、昨年8月に可動堰建設反対決議が可決されました。民意が反対であることは明らかです。
 こうした背景には、この6年間、建設省と地道に議論し、情報を出させてきた経過があると思います。情報が出されるたびに、可動堰計画は有害無益であることが多くの人たちに浸透していったと思います。
 こうした中で、私たちは昨年の秋に「第10堰住民投票の会」をつくり、住民投票への動きを開始しました。昨年11月住民投票を求める署名活動を行い、徳島市では10万1535人(有権者の49%)の署名が集まりました。藍住町では9663人(有権者の44%)の署名が集まりました。
 ところが、徳島市議会は2月8日、賛成16、反対22、退席1で、署名した人たちの「住民の意見を聞いてほしい」という願い(住民投票条例)を否決しました。藍住町議会も同様に否決しました。
 両議会が両方とも否決した背景には、国の公共事業に対して地方議会が従うという構造的な問題があると思います。市議会の議事録にも載っていますが、道路建設などで陳情に行くと、必ず建設省から吉野川の第10堰の件をよろしく頼むと、逆に陳情を受けるわけです。つまり住民が考えていることよりも建設省の意向が議会の判断基準になってしまうという力関係があります。もし逆らえば財政の問題も含めて仕返しを受けるということで、議会の選択の幅が狭まっている現実があります。

 今後の取り組み

 今後の課題に関連して、第一は、住民の民意を反映する市議会に変えていくためには、住民自身がもっと積極的に議会に関わる必要があります。特に今回の場合は4月の統一地方選で議会の構成が変わる余地が十分にあるわけです。議会の構成を変えることができれば、再度住民投票に向けての議案提出が可能です。住民投票を求める新人候補が何人になるかまだ確定していませんが、市議会の構成を変えようという動きは活発になっています。
 第二は、徳島市と藍住町で有権者の50%近い署名が集まったという事実。これほどの署名が集まったのに、住民投票が実現しないというのは住民投票制度自体の不備が現れた象徴的な事例だろうと思います。徳島市の市議会議員40人の総得票数は9万9000票、一方、住民投票を求める署名は10万1000票です。つまり、40人の議員の総得票数より住民投票を求める署名数の方が多かった。ところが、議会は10万人をこえる住民の要求を否決してしまう。これで民主主義といえるのか。住民投票の制度を変える必要性があるのではないかと思います。
 第三は、今回の議会では住民投票条例は否決されましたが、実際の署名数は歴然とした結果として残るわけです。可動堰計画は一旦待て、改めて住民の意思を問えというインパクトを与える数字です。少なくても、この民意をどう受け止めるかということが建設省には突きつけられているわけです。2月に入って建設省幹部が、住民と十分話し合いをした上で改めて計画を考えると発言しています。これまで住民参加なしに進められてきた公共事業ですが、この署名運動が公共事業に対する住民参加の一つのステップになったと思います。
 建設省は、民意にそって1日も早く有害無益な可動堰の建設中止すべきです。

  (文責編集部)